【記念講演・パネルディスカッション】

テーマ 〜『2025年 日本は? 世界は?』〜

基調講演 中山 太郎(大阪21世紀協議会理事長)

私は未来学者ではございませんけれども、色んな情報を整理してご出席の皆さま方にこれからどのような変化が起こっていくことになるのだろうかと、その中で何が1番確かで何が1番判り難いかということをお話を申し上げていきたいと思います。

1番正確なものは、人口の統計であります。比較的、人口問題というのは一般の国民に十分理解されるところまでいっておりませんけれども、この推計が大体正確さを保っております。例えば、日本の1900年の人口っていうのはどれくらいだったかと、今2003年ですから103年前ですね、人口4,400万人。2000年でとりますと、1億2400万人。それが更にこれから100年経ちまして、6700万人位になってくる。つまり12400万人の日本の人口サイズが半分になるということはほぼ間違いなく推定ができるわけであります。そういう中で65歳以上の人口が100年前は5%だったが、それが現在では大体18%、やがて100年後には41%になってまいります。

1次産業の比率が100年前は72%、製造業が中心でありましたが、現在は7%、2100年になりますとまた戻って15%に増えてくるだろう。又100年前の主な輸出品という物は生糸、綿織物、綿糸そのようなものが中心でございましたか、2000年の現在ではだいたい自動車、半導体、電子部品、事務用機器、100年後にはバイオテクノロジー、ナノテクノロジー、それから観光産業が大きなシェアを占めてくると、私どもは予測をしております。それから日本はこの環境問題で大変苦労いたしまして、技術的な開発が相当進んだために、これからは環境の技術が相当進んでいくのだろうと思います。特に途上国に対する環境の技術というものとODAというものが連動をしてくるだろうと私どもは考えております。

そういった中で日本の総人口はどうかというと、これから25年後を見ていきますと、0歳〜14歳までの人口が596万人減ります。つまり少子化の進行であります。それから15歳〜64歳までの生産年齢が3194万位に減少いたします。それから65歳以上の人口が1198万人増加すると、少子高齢化、生産人口の低下、こういう事がほぼ間違いなく予測できることでありまして、4年位経って、2007年位になりますと、生産力の維持をどうするかということが大きな国家的な問題になって参ります。そこで外国人労働者をどの程度日本の国内に受け入れるかという問題がでてまいります。これに対する検討を行っておりますけれども、これからの生産年齢人口が減ってくる時に受け入れるものは、知的水準の高い外国人を入れる必要があろうということと、ヘルパーなどをフィリピンあたりから入れる事を考えなければなりません。すでにアルヨ大統領は、昨年国賓として日本に参りました時に、国会で正式の大統領演説の中でヘルパーをフィリピンは日本に送り出したいという要請を致しております。フィリピンは300万人くらい海外に労働人口を発しておりまして、アメリカに100万、中東地域で100万、アジアで100万人位のフィリピン人が働いておりまして、そこから家族に対する送金がフィリピンの国家経済を維持しているといわれている事実がございます。

日本の場合は生産年齢人口の低下と反対に65歳以上の人口が1198万人、約1200万人増えてくるわけでありまして、この問題が非常に大きな国の経済・財政に影響を与えてまいります。少子高齢化という社会の中で1番国民の生活の中に極端な影響を与えてくるのは、この老人達の年金と医療、それから福祉の問題が国家にとっても、国民にとっても大きな課題になってまいります。男性は人生77歳生きております、女性は84歳位ですが、大体45歳位から成人病が起こり始めて医療費が上昇してまいりまして、1番高くなるのが75歳〜79歳位のところであります。そして高齢者医療というのは一時無料でありました。ところが高齢者の医療費が国民の総医療費に占める比率が3分の1近くなりましたから、これを別途移して介護保険料を制定したり、あるいは老人にも一部負担をして頂く様なことが今年の議会で議論されて法律が改正されるはずであります。そういう中で、失業とか色んな事で生活保護所帯が増えてきております。この生活扶助の問題と住宅扶助・教育扶助・介護扶助という生活関連の扶助を受けないと生きていけない人達というのは増加の傾向にございます。

それを支さえていく納税者は一体どうなっているのかというと、国民の総数に比べて納税人口は比較的少なく、4323万人が給与所得者で、自主申告者、納税者が708万人程度でございます。今一般の標準家庭というのが、夫婦2人、子供2人が標準家庭になっておりまして、それに対して、色んな控除を引いて384万円までが税金がかかりません。世界の中では、課税最低限度額は先進国でも非常に高いところにございまして、これをどこまで広め引き下げて課税率を高めるかという問題がこれから登場してくるだろうと思っております。そういう風に社会保障関係とそれから税を合わせたものが国民負担率と国際的に呼んでおりますが、それがだいたい現在日本では40%を超えつつあると思います。50%ともなると働く意欲がなくなってくるといわれておりまして、どこまで国民負担率を上げるかという問題は、相当慎重に検討しなければならないと考えております。その一部に消費税の税率をどこまで上げられるかという問題が必ず起こってまいります。現在5%でございますけれども、ヨーロッパ各国は大体15%の消費税率を持っておりまして、日本の産業構造と合わせて消費税のレイトをどうするかが財政上必要になってくると私どもは考えております。それも経済規模に似合ったものでなければならないことですけれども、1人あたりのGDPを米ドルで見ると、日本は2001年現在で$32.467、アメリカが$35.401ですから、比較的個人の国際的の中ではドルだてでは高い所にいるという風に考えて頂いていいだろうと思います。しかし、国土の面積、天然資源の保有高、あるいは工業力、大学の教育内容、教育水準、研究能力こういったものを全部あわせた国力を国際的に見てみると、これはスイスのIBMという経済研究所かやっている所ですが、30位でございます。世界の198カ国の中で、発展途上国も含めますけれど、30番になってきている。31番はどこかというと中国であります。中国はそこまで実力をつけてきだした。

特に私どもが心配しておるのが、これから起こってくる25年間に避けて通れない問題があります。それは先ほど申しました年齢構成の問題、それから生産人口の減少の問題もございますし、もう1つは少子化によってこの子供に関連してくる産業というものが萎縮してきます。塾の経営が困難になってまいります。小学校のクラスの学生数が30人になっております。もう少し減る可能性があります。一方学校の先生は公務員でありますが、解任できない。そういうことで、先生対生徒の比率がこれから小さくなっていきますが、先生方の組合では充実した教育が出来るとおっしゃっておりますけれども、少しアンバランスがあるのではないかと私どもは思っております。もう一つの問題が食料の自給率でありまして、わずか40%です。食事をしている60%が外国製品という風に私どもは考えております。

ここで問題になっておるのが、FTAの問題であります。FTAというのは自由貿易協定の話でありまして、日本の産業構造をこれから5年くらいの間に大変化を起こさせるであろうと見ています。WTOに加盟しました時に3003品目位の工業製品の非関税化をいたしましたが、これからやってくる問題はありとあらゆる物にこの関税障壁を外していくということになって参ります。中国が現在提案しているのが、中国とアセアン10カ国でFTAを創ろうと、この10カ国というのがラオス・ベトナム・カンボジア、それからタイ・ミャンマー・マレーシア・シンガポール・インドネシア・ブルネイ・フィリピン、これと中国が1つの巨大な市場としてやっていこうと、その間の貿易については関税を取らないとこういうことがすでに中国が提案をしているのであります。それに対して我国はシンガポールとだけ協定を結んでおりますが、中国の提案に対して日本と韓国と中国とアセアン10カ国で自由貿易協定を創ろうという風に申しております。ただここで、問題なのが食料品の問題であります。米を食べている民族というのはアジアに多いわけですけれども、この自由貿易協定が農業製品に影響を与えてくることは間違いございません。ドル単位で計算すると日本の米は1t当たり3,000ドル程度になっているのではないかと、それがベトナムなどなっていくと、だいたい170180ドル、タイで250260ドルであろうと思います。そうなってきて2毛作の所もございますし、日本の商社も現在すでに東南アジアでコシヒカリとか色んな種米を持っていって現地生産を考えていますから、そうなっていくと自由貿易協定の農業の分野に及ぼすとすれば、米作農家の受ける打撃というのは極めて大きなものが出てくる。こういうことで自由貿易協定は農業分野で過去10年非常に大きな障壁にあたっておりますが、これは長期的な目で見ると避けて通れないと思います。ここで何故この産業構造を変えることが出来ないのかと、ここが1番の大きな問題でありまして、国会の議席の中で農村出身の国会議員の比率が非常に高い、どうしてもそういうところに与野党共通した農産品の自由化の障壁がございます。

こういった問題が日本のこれからのアジアにおけるポジションというものをどう変えていくのか、今日はオーストラリアからのゲストがお越しでいらっしゃいますけれども、オーストラリアのケアンズで集まったケアンズグループというグループがございまして、これがいわゆる農産物の輸出を目的としている途上国の集団であります。高度工業技術製品を輸出してきた日本は、米は1粒たりとも輸入させないという国会決議を何回もやりましたけれども、結局5%ずつ米を輸入せざるを得ない状況になっております。だからその外来の米をどう処理するかが非常に大きな問題になっています。これをODAから出してくれんかという要求もありますが、1番喜んだ農林省でございまして、農林省は米が減りますので農林省の予算が余ってくるということが現実問題として起こっております。ただこの日本のお米という物は味が良いものです。また湿度もございますし、南の国の米はパサパサした米でございますので、日本人の口にはなかなか合いにくいという問題があると思います。そこでこの中国がどうなるかという問題は、深刻に国としても国民としても考えておかなければならない。

恐らく世界は現在、再編成の過程にあると思います。1つはアメリカとメキシコとそれからカナダとチリの間にすでにFTAは成立を致しております。その為に日産自動車がメキシコで自動車工場を持っていますけれども、部品を日本から輸入するといった場合に自由貿易協定がありませんから関税が高い、アメリカの会社から入れれば関税が低いと、関税がないわけですから、こういった問題が現実に起こっております。この自由貿易協定をどういう風にこれから進めていくのか、非常に大きな課題になってくると思いますし、国内の産業構造も大きく変わっていくだろうと思っています。しかし、これを止めればアジアでは日本は孤立する傾向に向かうだろうと思います。20年〜25年間展望してくると、こういうが私ども国民が共有している問題でございます。

ここで中国に対する投資を見てもらいますと、中国に投資をしている国はアメリカが第一位、日本が第2位であります。台湾が第3位になっておりまして、よく中国と台湾の中で戦争に近い争いが起こるのではないかといわれていますが、投資の面からいいますと絶対そういうことは起こりそうにもない。非常に順調に香港を経由して行われている。次にこの中国本土で生産されている電機製品を比率でご紹介すると、カラーテレビが世界市場の中で26.4%中国製が占めています。そしてDVDプレイヤーが38%、携帯電話がほぼ13%、デスクトップパソコンが11.9%、HDDが6.9%、エチレンが6.0%、VTRが23.2%、鉄が14.9%、四輪車が3.6%、エアコンが38.7%、中国製品が世界のマーケットを押さえているわけです。次に日本の製造業の海外生産比率、海外に進出した企業がこの生産現地の人達を使った、部品の調達率は大変高まってきております。そういうことで日本から部品を輸出する率が減ってくるという問題が出てきております。これは非常に大きな問題になってくるだろうと思います。

アセアン・中国・韓国・米国・EUの貿易関係を皆さまにお示しをしたいと思います。日本を真ん中におきますと、アメリカに対する輸出は1,465億ドル、アメリカからの輸入は649億ドル、EU15カ国に対しては輸出が783億ドル、輸入が468億ドルであります。それでは逆にアセアンからは日本に対しては596億ドルに対して輸出は685億ドルになっています。また中国は日本から輸出が304億ドルに対して、中国からの輸入は551億ドルになっています。こういう風にアメリカとEUに輸出が超過しておりますけれども、アセアンとか中国からは輸入が超過しているという現象がはっきりと出ているわけでございます。そこで自由貿易圏が出来てくると変わってくる。今先ほど申し上げた様にカナダ・メキシコ・アメリカ合衆国というのは1つ、チリも1つです、恐らく今年中から来年にかけまして南米全体を今度は取り込んだ形のアメリカ大陸全域が1つの自由貿易圏を形成していく可能性が極めて高いと思います。ヨーロッパに行きますとヨーロッパはすでに15カ国1つの連邦を作っておりますが、これは自由貿易協定と一緒であります。もう2年経ちますとさらに10カ国加盟いたします。トルコも加盟問題でごたごたしていますが、これも片付くと思います。そうするとヨーロッパ25カ国が自由貿易協定をします。南北アメリカ大陸は全部自由貿易協定になってくる。アジアでは中国とアセアンが10年以内に自由貿易協定を創るといっておる。日本はそれに負けじとやっておるのですが、日本の場合はたまたまODAを戦後ずっとアジアの国々に適応してきましたから、この関係が非常に現在も生きております。アジアの国々では中国との自由貿易協定を先に結ぶか、日本と先に結ぶかという事がこれからの大きな国際外交の問題に展開してくるだとうと思います。今、フィリピンと日本、タイと日本、この間に自由貿易協定を結ぶ交渉が行われておりまして、非常にこれからの大きな国際経済圏の再編成という事が考えられると思います。そういう中でアジアの工業化が進んで参りまして、貿易の金額的な増加の背景として、東南アジアのコンテナ取扱量を見ると、世界のコンテナ取扱量の43%を占めています。巨大なレイトを示しているのです。これはアジアの水平分業と貿易、これが大きく貢献をしていると思います。ここでどこの国際ハブ空港がしっかりしているかと考えていくと、シンガポール、韓国、とくに中国の上海空港では滑走路が3本出来るわけでありますから、足の長い輸送機が登場して参りますと日本を越えて、上海とかシンガポールに直行便が出る可能性があります。これが1つの大きな問題であります。それからコンテナ船のコンテナ積載数量が増えてきたものですから非常に大型化してきました。そのために岸壁の深さが15mないと接岸できないことで日本は少し立ち遅れております。韓国の釜山それから台湾の高雄、あるいはシンガポール・上海・香港、ここらが非常に有力なコンテナ埠頭を持っております。

この2020年をターゲットと致しまして、世界のGDPに占める構成比を予測しております。これは日本貿易振興会のJETROの数字ですけれども、米国が18.5%位、西ヨーロッパが19.4%、日本が9.6%、東アジアが15.9%、その他が36.6%、これを頭に中に入れながら自由貿易圏が形成された場合にどういう変化を起こしてくるか、ということの国内政策を立てなければならないと思います。東アジア諸国のGDP成長率の推移を見てみますと、日本の場合は1980年から90年が4.1%、90年から2000年が2.6%、2000年から2010年が1.9%、2010年から20年の伸び率はわずか0.5%という悲しむべき数字が予測されている。東アジア全体を見ますと、80年から90年代は7.7%、90年から2000年が7.6%、2000年から2010年が6.8%、2010年から2020年が5.5%という風な数字を示しておりまして、中国は同じ様に80年〜90年が8.9%、90年〜2000年が8.3%、2000年〜2010年が6.5%、2010年から2020年が5.6%となっています。今度の肺炎の影響でどの程度GDPが下がるかが大きな問題だと私は見ております。

一方、日本で天然資源の問題が登場してくるのが、今回の湾岸のイラクにおける戦闘の戦後復興の問題になっている石油の問題です。日本の油の輸入地域別を見ますと、日本の場合は中東が88.8%占めています。これは全てイスラム圏でありますから、これがもし反日的な態度をとると非常に大きな影響を受けます。特に電力会社は長期契約を結んでおりますから、非常にこの中東地域に88%も依存している所は日本だけでございまして、国策的に非常に危険な領域に達していると私は絶えず注意を申し上げておるのです。アメリカは中東依存から脱却を始めました。昨年ロシアのルコエルから石油200万トンを輸入しております。だからロシアの経済成長は5%〜6%になっていますけれども、日本はマイナスになっております。ロシアは5%〜6%くらいの国内経済成長率を示しており、その主なものは油です。ロシアの1番大きな石油会社はルコエル、これがいくところで必ず経済が繁栄する。こういう状況が私どもの目に見えておるわけでありまして、なかなかこのエネルギーの問題は深刻な問題だろうと思います。特に日本の場合、原子力発電に大きな力を入れてきましたが、東京電力の不祥事件が起こりまして国民の間に原子力発電に関する不安が起こっている。恐らく今年の夏の東京地域は停電が出るのではないかと予測をしているところでありますが、この問題は日本の国力に非常に大きな影響を与えてくる可能性がございます。原子力の発電の開発状況はアメリカが1位、イギリスが7位、フランスが2位、ドイツが5位、イタリアはゼロです。カナダが9位、ロシアが4位、日本は3位になっていますけれども、ご案内のように国民の原子力による過敏性が建設を大きく遅らせたものと見ております。私は前から申してきたのですけれども、この油、天然ガスの輸入先を極東地域に一部変えたらどうかと、サハリンにガス田と石油がでることは確実でありましたから、ここからパイプラインで北海道へ上げるか、あるいは太平洋岸沿いに関東にもってくるか、あるいは別ルートで日本海岸を通して新潟に上げてくるかという事の検討をやってある最中でございます。もう一つ極東のバイカル湖の周辺地域に巨大なガス田がございまして、私どもはここを共同で探査して、そしてシベリアを通ってナホトカ周辺までパイプラインで引っ張ってくることを考えています。中国は中国でシベリアからガスを買うと考えておりますので、これがロシアにとって、今日本より中国の方に関心が高まっております。それは大きな理由がありまして、日本の電力会社は長期の輸入契約をやっております。その為に新しく輸入先を変えるというのは大変難しい。ロシア側から見ると、日本というマーケットは非常に悪いマーケット。つまり、電力会社という大口消費化が全部中東に20年あるいは15年長期契約しているものですから、マーケットとしての魅力はない、しかし韓国にはマーケットとしての魅力は非常に大きい。恐らくこれからの10年、20年の間には、シベリアの油が中国を通ってそしてオウリョク江を越えて北朝鮮に入って、韓国のガスパイプラインネットにつながる可能性が大きいと思います。韓国はすでに国内全部ガスパイプラインのタンクが出来上がっております。こういう形で北東アジアのエネルギー問題というのが新しく登場してくると思います。

ここに1つの大きな日本の選択の問題が出てくるのであります。世界中でガスパイプラインを引いている所がどこにありますかといいますと、ヨーロッパです。ヨーロッパは冷戦時代からすでにロシアからガスを買っています。そのパイプラインの長さはスペインまで続いておりまして、80万kmのガスパイプラインがヨーロッパ各国にシベリアから繋がっております。冷戦時代といえどもこれは止めることはございませんでした。アメリカからはメキシコの間には40kmのパイプラインがございます。こういう風にしてパイプラインネットワークをどうするかという問題が大きくなってまいりますが、現在世界で関心を集めているのはカスピ海周辺のガス田でございますし、オイルであります。このカスピ海の横にあります黒海に石油パイプラインを通すということで黒海からトルコのダーエルス海峡を通って地中海に出てくるものですから、トルコ政府は1千隻以上のタンカーを通さないという国内規定を作っておりまして、ここで大きな変化がすでに起こり始めています。アメリカも1枚噛んで、そしてアゼルバイジャンからブルジョアを通って黒海に出るパイプが完成してすでに油を送り始めております。もう1つはトルコを越えて地中海に運ぶと、こういう石油パイプラインが現在アメリカの援助で進みつつあります。こういう風に大きくエネルギーの問題が変わってくるだろうと思います。それに合わせて、ものすごいスピードで変化しているわけです。

日本の場合見ると、江戸時代は東京から大阪までに来るのに、14日かかっているのですね。大名行列で14日、早かごで4日、飛脚で2日半、明治30年は蒸気機関車で15時間35分かかっております。昭和5年は蒸気機関車で9時間、昭和31年は電車になりまして7時間30分、33年に6時間30分になり、昭和39年にひかりで3時間10分、現在は2時間30分です。飛行機で飛ぶと50分、これだけ同じ距離の間を移動するのに、このスピードが変化しているということは、これが又世界の新しいネットワークに同じような変化を起こしてくるだろうと思います。

こういう風にご紹介をする時間もそろそろ終わりにさせて頂きますが、これから起こってくる国際的な問題として飲料水の問題が起こってくる。水の問題。この間水フォーラムがございましたが、水・食料・大気汚染、それから土壌汚染の問題が出てまいります。これを国際的にどのような協力をしていきながら解決をしていくかということで、これを国際協力できなければ大気汚染によって地球の温暖化は高まります。だから、東京に集まってくる太平洋にある小さな国の首脳会議は海水の水位が2m上がったら自分の国がなくなるという小さな島の国があります。そういう問題が真剣に現在、科学的な統計に基づいてどう解決するかという問題が国際的な課題として出てきております。

こうして参りますと、世界の人口問題、水問題、大気汚染、土壌汚染、色々問題が我々の目の前にありますけれども、もう1つの大きな悩みは宗教の問題であります。今回のイラクの問題でも背景にありますのが宗教の問題です。そこで世界の人口のなかでキリスト教の信者がどれくらいあるかというと大体20億人、全体の宗教の32.3%、それからイラクとかサウジアラビアとか日本が主に輸入している油の生産国のアラビア半島も含めてイスラム教が12億人、19%でございます。ヒンドゥこれはインドの宗教でございますけれど、13.7%で85000万人、仏教が5.7%で35000万人、ユダヤ教が0.3%2億、儒教は0.1%で535万人。こういう風に宗教の分野が大きく地球の新しい編成に影響を与えております。ロシアはロシア正教でキリストであります。東ヨーロッパも各正教会があります。これもキリスト教。それから西ヨーロッパこれも全てキリスト教、アメリカはキリスト教、カナダはキリスト教、ラテンアメリカもカソリック、全部キリスト教圏。だからものの考え方、神に対する考え方っていうのは共通性がございます。これが世界の流れの作る問題の要になるといいます。

それではアジアはどうかというと、日本は多神教の国家で、クリスマスイブはクリスマスケーキを買って帰ろうかと、大晦日は仏教で除夜の鐘を聞いております。元旦は初詣を神社で、これは神道。色んな宗教の神が1人の心の中にいくつも存在する国家というのは多神教。インドも日本も同じように多神教国家でありますが、イランのハラミ大統領は文明間の対話を是非やらないと世界の戦いは終わらないとおっしゃっておりました。こういう風に皆さま方にこれからの20年我々の住む地球社会はどんな問題を抱えているのか、何が大きな変化の引き金になるのか、そこで色んな国に住む人達の経済はどのように影響を受けるのか。

人類の宗教とか国とかそういったものを越えて1つの共通の概念が生まれ始めたのが、国際連合というものが1つの転換期に来たということであります。ちょうど戦争の終わる年、5月にサンフランシスコで国際連合が結成されました。その時に、常任理事国になったのが戦勝国のアメリカ・フランス・イギリス・中国・ロシアでその当時のソ連、このどの1国でもNOといったらあらゆる国連の決議は無効になるわけです。そういう仕組みの中で今日まできて、先日フランスのシラク大統領がNOとインタビューで言った為に、アメリカは国連決議を取るといったことが不可能であると決断したわけです。国連が機能を喪失してくると世界の安全保障をどうしていくのかということになりますが、それは先ほどから申し上げている自由貿易圏の中に安全保障と経済の自由化という問題も紙の表裏一体になった様な物が各大陸で起こってくる可能性がある。ヨーロッパをご案内のように北大西洋同盟条約がございます。アメリカもそれに加盟しております。アジアはどうかと、アジアは全部個別の安全保障条約を結んでおります。日米・米韓・米比それからアメリカとオーストラリア・ニュージーランド、こういう風に縦軸で結んでいるわけでして、宗教もご案内のように神道・仏教・儒教・文教・ラマ教・イスラムもあるということで非常にこの宗教観が違う。こういった世界の構図の中で我々の生きる道をどう選択していくのかといったことが今問われている時代であろうと思いますが、世界自身が新しい枠組みを造り始めた。我々もそれに合わせた考え方を持たないと孤立への道を歩む以外に方法がない。特に関税が非常に大きな影響を与えてくると思います。

以上申し上げて、後はコメンテイターもいらしておられますので色々とご議論を頂ければ幸いかと存じております。どうもご清聴有難うございました。